WSDC2021 論題解説①

論題解説なるものを始めるのですが、いくつか注意点を。

  • 即興ラウンド(Round 2,4,6,8)のケースは僕がメインで作っていたので、どういうケースをどのような思考プロセスで出したのか覚えている範囲で書こうと思います。
  • 準備ラウンド(Round 1,3,5,7)のうちRound 3のケースのみ僕がメインで作っていたので、即興ラウンド同様のことを書こうと思います。その他の論題に関しては、手伝った部分もありますが、僕の勝手なケース解釈が混じっているかつあまり詳細に書けないかもしれません。
  • 即興ラウンドの思考法に関しては、僕はおそらく他の人とかなり違った方法でケースを考えているので参考になるかは分かりません。詳しくはRound 2の解説の欄に書きます。

 [Round 1(Prepared)]
〈Hegel、Panda共通〉TH regrets the commercialisation of space.

(本院は、宇宙の商業化を後悔する)

(論題作成者による補足:「宇宙の商業化」には人工衛星の商業利用だけでなく、宇宙探査プログラムやロケット打ち上げ、宇宙へのアクセスの商業化なども含む。)

(※注…Prop.側は、「宇宙が商業化されなかった世界」が「宇宙が商業化された世界(=現状)」よりも良いことを示し、Opp.側はその逆を示す)

 

Elon MuskのSpace Xとかつい最近Jeff Bezosが宇宙旅行に行った(Blue Origin)とか、日本でいうと一時期話題になった前澤友作剛力彩芽を捨てて宇宙旅行に行く話のイメージです。ただ、宇宙の商業化はそれだけにとどまらず、Google Mapとか衛生から映像を取得してるから一応入るっぽいし、上記の補足にもあるような例も含みます。

このモーションはunbalancedすぎてPropは非常に厳しい感じでした。そもそもRegret commericialisationなので、Propの証明責任がcommericialisationが存在しなかった世界vs現状の比較で、stateのspace research(NASAJAXA等)はデフォルトではどちらの世界にも存在し、特にtrade-offが発生しない。Oppのbenefitが大量に存在するけどPropのBenefitは謎状態でした。とはいえ沢山の心の広い先輩ディベーターの方々に相談した結果、以下のケースに落ち着きました。

Argumentは2つで、
1. Opportunity cost 2. Space research (by state) would be better


1つ目は結構funkyなargumentでTeam Chinaも困惑していた最強argumentです() これ(https://youtu.be/aOEccYc-tug)のLOのargumentの派生版的な感じです。
要はSpace commericialisationによって使用されているresourceがもっと有用なことに使えたはずで、民間の宇宙開発のOpportunity costが大きすぎるという話です。お金とか貴重な資源とか。宇宙開発って投資金額莫大なくせして、人々にtangibleなbenefitもたらさないっていうのはほんとそれって感じではあります。
このArgumentで若干問題なのは、「じゃあ民間の宇宙開発が存在しない世界(Counterfactual)において、これらのresourceがどこに使われているんじゃ」と言われると答えづらいところにあります。あくまでPolicy motionではないので「ResourceはWelfareに使われます!」とかFiat(Fiatについては次の記事を参照)できないし、、、これを解消する方法はcompanies' incentives to invest in spaceを分析した上で、Given the incentive structure, what would have been the most likely alternativeという話をする感じです。難しい。簡単に言うと所謂Big techと言われる超巨大企業が利益を追求しない長期的なハイリスクハイリターンな投資をしているイメージ。個人的には直感的にAIとかテクノロジー系に流れるのかなと思いました。

それはともかく、Argument内の構造は以下の3つのことを順々に説明していく感じでした。

a) Development cost is going to be high
b) Benefits of space commercialization is marginal
c) This could’ve been used for much better purposes

 

疲れたので2つ目のargumentへ。

Space development is better on Prop side

a) The lack of regulation leads to pernicious actions by corporations e.g. creation of space debris
b) Resources are much cheaper

沢山の企業が衛生打ち上げたりロケット発射すると宇宙ごみが増えて色々まずいことになります(詳しくはググって)。結果、NASAとか政府系の宇宙開発ができなくなるのがまずいという帰結です。「最初のargumentで宇宙開発要らないって言ったじゃん、矛盾じゃん!」と思う人がもしかしたらいるかもしれないので補足しておくと、政府の行う宇宙開発と民間の行う宇宙開発はやっていることが全然違います。前者は科学的(ISSで実験とかしてる)な目的なのに対し、後者はビジネス開拓が主要です。

bについては希少な人材を沢山の企業が参入して高い給料払い出したらNASAどうなるの+開発に必要な希少な原料の価格高騰を招くんじゃねという話です。

China戦について

(Prop) Japan vs (Opp) China

結果:Unanimousで負け

これは僕(試合には出ていなかったので観戦していた)から見ても負けていたのでしょうがない感じでした。相手のWhip(Bowser Liu)が上手すぎてケースが全部死にました。マジで上手かった。GWまでは普通に勝ってたのに...あっぱれですね。

ちなみにChinaのケースはcorporationのcapacityとincentiveに分けてspace commericialisationのbenefitについて話してました。結局はspace developmentが促進されるというケース。

全然関係ないけど、予選が終わった後にこんなのを見つけました。ほぼ一緒のモーションをTeam Hong Kongがディベートしてます。見ておけばよかった。キレそう。
https://youtu.be/NmC8UH9xLEU


[Round 2(Impromptu)]
〈Hegel〉THW ban the production and consumption of meat.

(本院は、肉の生産と消費を禁止する)

これを見ればあなたもハッピー。
https://youtu.be/2gAbqTedM8M

〈Panda〉THBT the International Olympic Committee should recognize an athlete's right to protest.

(本院は、国際オリンピック委員会がアスリートの抗議する権利を認めるべきであると信じる)

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ケースの考え方について

前述の通り大半のディベーターとは異なっている(気がする)ので、参考にするべきかはうーんって感じです。

具体的には、ケースって普通は帰結から考えるもので、Minorityの話をしようとかPrinciple出すかとか決めた上で中身を詰めるのが普通だと思うんですが、僕の場合真逆で、例えばこのモーションだと真っ先にOlympicにおけるProtestってどういう効果があるって分析を出しやすいか(例えば沢山のglobal audienceが注目する、オリンピック選手って国の代表としてglorifyされているからみんな話をちゃんと聞く)とかから考えます。要は、ディベートで論理的に説明しやすそうな分析を沢山ランダムに連想して、そこで思いついた話にそれっぽい帰結を加えて複数のまとまったargumentを生成する、というイメージです。こういう考え方をしている理由におそらく、昔からディベートの音源を腐るほど観ていて、「誰々が何年のどこどこの大会で言ってた分析と別の人がどこで使ってたframingを混ぜれば勝てる!」みたいなある意味テキトーな方法でなんとかなってしまったからなのだと思います。ということで、せっかくなら各モーションの関連音源のリンクも貼っていこうと思います。

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モーションが発表されて一同、なんだこの謎モーションは?ってなりました。ただチームメイトが謎にめちゃめちゃexampleを知っていたのでめちゃめちゃ助かった。
Prop有利な気がしていてOppはどういうケースを立てればいいのかなというのは未だに非常に謎。

実際の試合ではPropだったので、どういうことを言うべきなのかよくわからなかった(かつ未だに自信がないものの)とりあえず困ったらのPrincipleとPracticalを出しました。今回はアイデアがあんまり出ないので帰結ベースで立てました。

 

ではまず、Principleから。

正直よく分からなかったので、とりあえずa) Freedom of speech侵害ダメだろ b) Protestはself-defenceの一種です c) Olympicの意義的にこれをIOCがやるべき という3つに分けて立てました。あんまりセンスないargumentでごめんなさい。

a) freedom of speechから、ここではなんでこのcontextにおいてathletesの表現の自由がそんなに大事なのかを説明しないといけないので、なんでそもそもathletesがprotestをしてるのかのcharacterisationを詰める必要がある(と思ったけど正しいかは知りません)。じゃあなんでprotestしているんでしょう。主にminorityが政治的に抑圧されていることへの抗議を表明しているケース、例えばBlack Salute(https://en.wikipedia.org/wiki/1968_Olympics_Black_Power_salute)、が多いとするのがFreedom of speechの重要性を伝えるにはいいのでは?ここでじゃあなぜこのcontextがmajorityなのかを論理的に説明しなきゃいけないので、そもそもオリンピックのために一生を捧げてきた選手がメダルの授賞式なりオリンピックの会場においてわざわざ政治的な発言をすることってなくて、何かしらの大事な理由があるからしている、つまり自分のidentityにとって大事なissueであるはずだという推測ができるはず。特に、政治的な発言をするとスポンサーが減ったりするかもしれないし。こういうframeをするとpractical contingentにならず、principleっぽくなる。今書いてて思ったんですけど、b) self-defenceがfreedom of speechの重要性と被りますね。Black saluteって黒人への権利侵害を世界に訴えかけるもので、自分自身のidentity/communityのself-defenceの一種となるもんね。あとは、Olympicという場が世界中にメッセージを発信できdiscourseを生むことができるuniqueな場だからこの権利って大事とも言えます。

最後に、c) This aligns with Olympicの意義 ですが、これは言うことなかったから付け加えただけで正直必要なのかは謎。相手が言ってくるであろうOlympicに政治は要らない!的な話のpre-emptionにはなるけど。Olympicの意義がそもそもworld peaceとかなのかな、でも結局これってpractical contingent(world peaceが起こるかに依存している)だし、そもそもOlympicのルールとか大会仕様って毎回変わるもの(例えばスケボーとか今年から種目で加わってたし)だから最終的にこのprincipleを守ることがなぜ大事なのか非常に謎。

 

続いて、Practicalについて。

まずSQにおいて社会的に認識されていない問題があって、そのrecognitionが上がる話をします。

確実にOlympicという場であるからこそ、世界中のmediaからのattentionを得れる機会であるというのは割と自明だと思うので、一番Opposition sideとclashするのは、whether the ways in which media portray these issues would be good or badという所に帰着すると思います。要はBlack saluteとかColin Kaepernickみたいに膝をついた黒人選手がバッシングされるか、それとも黒人の問題への共感が増えるかどっちがlikelyなんだという話です。ぶっちゃけ現実世界を見るにどっちもmutually exclusiveではなく存在し、equally likelyだけど、debate landでは

1) structural reasons as to why either case is more likely

2) comparison of impacts on either case

の2つのアプローチによって論理的に説明できます。ここではProp用のケースなので、1)からOlympicに出場している選手は国を代表している選手としてmediaでglorifyされているはずでバッシングの対象になりにくいとか色々理由は挙げられます。2)については、多少バッシングが増えたとしてもこれってどのみちFOX newsみたいなconservativeなmarginal differenceじゃないかと言えそう。

Syria戦について

(Prop) Japan vs (Opp) Syria

 結果:Unanimousで勝ち

R1で負けたのでPower pairingで0勝同士の対戦でした。なのである程度実力差があった印象。

Oppの出すべきargumentがよくわからなかったので、試合後ジャッジに聞いてみたらOlympic/sportsを見ている人のutilityが下がる的な話をするとか言ってました。もし立てれるならMinority has other avenues in which they can advocate for their own issues whereas to sports fans Olympic specifically is a unique place where they can derive meaning fromみたいな比較言えるんじゃないのかな。このモーションについてはこれ以上書きたくないのでここで終わりましょう。

関連音源

Sports系だと以下おすすめ

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バイバイ〜