マターレクチャー各論⑤ - International Relations (総論)

こんにちは!Education, Politics, Media, Social Movementsときて、5つ目の記事はInternational Relationsです!

International Relationsは苦手意識を持つ人が多いですが、実際はそんなに難しくありません。ある程度のクオリティーのスピーチをするのに、特段深い知識も要りません。また、ある程度基礎を押さえておけば相手チームが勝手に自滅してくれるので、勝ちやすい分野でもあります。

 

なお、予め注意書きですが、以下書かれている各国の情報は記事執筆時の情報で、また、筆者は国際関係の専門家ではありません。不正確な情報が一部あるかもしれませんがご容赦ください。

 

1つ目の記事:

debatepanda.hatenablog.com

2つ目の記事:

debatepanda.hatenablog.com

3つ目の記事:

debatepanda.hatenablog.com

4つ目の記事:

debatepanda.hatenablog.com

 

Motionを挙げておきます。

THBT it is in the interests of Taiwan to pursue friendlier ties with China (e.g. economic, political and cultural ties) (WUDC 2023 R7)

That we would prefer a world where Vladimir Putin died today suddenly of natural causes. (Australs 2021 SF)
In late 2020, as a response to ongoing border skirmishes, India enacted a series of restrictions limiting Chinese FDI and imposed high import tariffs on Chinese goods and services. THBT India should substantially ease restrictions on Chinese trade and investment. (UADC 2023 R7)

Since 1999, various bodies such as the United Nations, the European Union, and the United States have placed sanctions on the Taliban and Afghanistan more broadly. They fall generally into two categories: economic sanctions, like the suspension of developmental aid and the widespread freezing of government assets, and non-economic sanctions like arms embargos and travel bans. THW lift economic sanctions on the Taliban. (ABP 2023 R5)

That Western states should support local rebel groups (e.g. by funding them and giving them intel) as opposed to direct military intervention in other states (Australs 2022 SF)

 

IRで最も重要なのは、アクター(国や組織)がどのように行動するか です。

そして、アクターの行動はincentive (動機)によって決まります。

アクターのincentiveは様々です。国内での権力を維持したい、今まで以上の富が欲しい、経済発展を達成したい等ありますよね。

とにかくIncentiveが大事!これは具体的な話に入ったところで確認してみてください。

 

この記事では、総論について書きます。

各論(アメリカや中国等、具体的な国の関係や情勢)の方がディベートでは大事ですが、国際情勢は常に変わっていくこと・国内経済/政治/貿易等と密接に関連することを踏まえて、記事としては書かないつもりです。

ということで、以下の4つに絞って話したいと思います。

・Sanction vs Engagement

・Military intervention vs Alternatives (funding local rebels, assassinating leaders, etc.)

・International Politics

・意味不明なモーションへの対処

1. Sanction vs Engagement

Sanctionは経済制裁、Engagementは貿易をしたり外交チャンネルを作って交渉したり、という感じ。

経済制裁というのは基本、住民を抑圧したり、独裁政権だったり、国際法に従わなかったり、という国家に科されるものですよね。

当然、制裁をする目的はこれらの国家の行動を抑えることです。

では、SanctionとEngagement、どちらの方が効果的でしょうか?

 

Sanctionが効果的な理由:

・Sanction → 国内の人々が貧しくなる → 人々の不満が溜まる

・Sanction → 政権自身も資金が枯渇するので武器を買ったりできない → 政権は困るので、仕方なく行動を変える

Sanctionが効果的でない理由:

・Sanctionには常に抜け穴がある e.g.イランが制裁下でも中国と貿易

・現地政権の資金が枯渇すると国内でのさらなる搾取につながる

Engagementが効果的な理由:

・貿易によって先進的なアイデア(民主主義の考え等)を輸出できる

・関係を続けた方が交渉できる (e.g. イラン核合意)

Engagementが効果的でない理由:

・貿易の利益は全て現地政権に吸収されてしまい、これらの利益は支配強化(武器開発等)に使われる

(他にもたくさんあると思います!)

 

このモーションで考えてみましょう。

Since 1999, various bodies such as the United Nations, the European Union, and the United States have placed sanctions on the Taliban and Afghanistan more broadly. They fall generally into two categories: economic sanctions, like the suspension of developmental aid and the widespread freezing of government assets, and non-economic sanctions like arms embargos and travel bans. THW lift economic sanctions on the Taliban. (ABP 2023 R5)

Govであれば、経済制裁タリバンが応じないから経済制裁は効果的でない、と言うことが考えられます。一方、Oppならタリバン経済制裁に応じて穏便になる、と言いたいところです。経済制裁に対してタリバンがどう反応するか、が1つの争点になりますね。

では、タリバンの反応を検討しましょう。分かりやすく3パターンに分けてみます。

  1. タリバンが反発して、より過激になる
  2. タリバン経済制裁を完全に無視する
  3. タリバン経済制裁に応じ、より穏便になる

まず、パターン1 が一番起こりやすい(most likely)と証明してみましょう。

前述の通り、アクターの行動はincentiveによって決まります。

タリバンのincentiveは何でしょうか?

タリバンは何を求めているか?国内での政治体制の維持ですよね。

経済制裁が起こる → 国内の人々が貧しくなる → 人々の不満が溜まる → タリバンは国内で政治的支持を得るために「欧米の経済制裁のせいで皆苦しんでいる!」と欧米を非難 → 反欧米スタンスを取るようになる

 

2. Military intervention vs Alternatives (funding local rebels, assassinating leaders, etc.)

Military intervention (軍事介入)については、時系列に考えるようにしましょう。

a) どういう場合に軍事介入がなされるか

b) 軍事介入自体は成功するか

c) 軍事介入後の復興は成功するか

 

まずは a) どういう場合に軍事介入がなされるか

ディベートで問題となるのは、2つ:

1) Do we intervene too much or too little?

2) Do we intervene in the right circumstances?

です。

We intervene too littleと言う場合、一番登場する例がモガディシュの戦闘です。

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モガディシュの戦闘とは

1992年、ソマリアでの内戦を受けてアメリカ兵を主力とする多国籍軍ソマリアに派遣される。モガディシュの戦闘は、その一環で行われた首都モガディシュでの戦闘を指す。

この戦闘で死亡した米兵の遺体が裸にされ、住民に引きずり回されるという悲惨な映像が公開され、アメリカのニュース番組で放映された結果、衝撃を受けたアメリカ国民の間で撤退論が高まった。ソマリア介入は失敗に終わり、翌年ルワンダで大虐殺が起こった際アメリカが介入を躊躇し、大量の殺戮を傍観することになった。

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これは絶対知っておいてください。WUDC 2010の決勝で、優勝したシドニーチームがこの例を多用したことでディベーター皆パクリ始めたからです。殆どのジャッジも当然知ってます。とりあえずMogadishuと言えばニュアンスが伝わります。

 

ここから分かることは、軍事介入の意思決定の過程で、数人(正確には19人)のアメリカ兵士の犠牲の方が何十万、何百万のソマリア人・ルワンダ人の命よりも優先されるということです。

なぜ自国民の兵士を優先するのか?当然アメリカ人からすれば、兵士はアメリカのため命懸けで戦ってくれるヒーローです。彼らの命を優先する方が、遠く離れた国の情勢よりも重要に感じるのは仕方のないことです。

 

We intervene too muchと言いたい場合、アメリカのイラク戦争アフガニスタン侵攻が良い例でしょう。

結局、介入するかしないかを決めるのは政治家です。政治家のincentiveは自身の政治権力。政治的に人気な介入と実際に必要な介入は乖離することが多いです。

具体的には、この動画を観るとわかりやすいと思います。

How to Sell a War to the American People - YouTube

 

ではもう一つ、Do we intervene in the right circumstances?

間違ったinterventionは前述の通りイラク戦争アフガニスタン侵攻、もっと昔ならベトナム戦争等を調べるといいでしょう。

正しいinterventionについても方向性を示しておきます。

NATOユーゴスラビア空爆 - セルビア武装勢力によるコソボアルバニア系住民人への虐殺、民族浄化を止める目的で行われました。

ユーゴスラビアについてはその後のThe High Representative for Bosnia and Herzegovinaの話等色々調べるべき話もあります。

 

次に b) 軍事介入自体は成功するか

アフガニスタン侵攻を例に考えましょう。

アメリカはタリバンに比べたら遥かに戦力差が大きかったにも関わらず、20年間完全にアフガニスタンを占領することができませんでした。

ゲリラ戦術の使用(詳しくは後述)や現地住民からの反発が挙げられます。

現地住民からの反発についてですが、理由としては、アメリカ軍により生活を破壊された過去、アメリカに擁立されたガニ政権の不人気さ(パシュトゥーン人とタジク人の民族対立等も関わってきてます。詳しくは調べてみてね)が挙げられます。

軍事介入をする際に、drone strike等民間人の犠牲が多い戦術を使うと、当然現地の住民は親戚や家族、友達を失うことになるので、反米になり、現地政権を支援することになります。

先進国が介入したから必ずしも成功するわけではないことにも注意しましょう。

 

また、リビア内戦のように、双方が先進国に支援を受けている場合もあります。リビアでは、片方の陣営がトルコ・イタリア・カタール等の支援を受け、もう片方がUAE・フランス・ロシア・サウジアラビア等の支援を受けています。

 

最後、c) 軍事介入後の復興は成功するか

これについてはイラク戦争を調べるのが良いでしょう。

2003年に始まったイラク戦争ですが、当時のフセイン政権は3週間で崩壊し、アメリカ軍は2011年にイラクから撤退しました。しかし、その後、イスラム教の宗派間の対立等を背景にイラク政府の統治は不安定な状況が続き、ISISが台頭するようになってしまいました。

このように、ただ介入するだけではダメで、その後の政治的安定を担保できる制度構築が大事になってきます。

詳しく知りたい人は、一概に成功例とは言い難いですが、一例としてThe High Representative for Bosnia and Herzegovinaについて調べてみると良いと思います。

 

ここまでがMilitary interventionについてでした。

では、他にはどういう介入方法があるのでしょうか?

1つ目に、funding local rebels

例としてはイランが挙げられます。

まず、イランはサウジアラビア犬猿の仲です。お互い中東での覇権を握りたいと思っています。サウジアラビアは、隣国のイエメンで戦争をしていますが、その相手Houthiという武装組織はイランによって支援されています。

また、イランはイスラエルとも仲が悪いです。最近の紛争でニュースになっているハマスはイランが積極的に支援しています。また、ハマスとは比べ物にならない規模で活動しているのがHezbollahです。Hezbollahはイスラエルの北にあるレバノンを拠点とする軍事組織です。ただの組織ではなく、一国の軍隊並み或いはそれ以上に強いです。これもイランの支援を受けています。

このように、政治的コストの高い自国軍隊派遣をせずに、local rebelsに武器や資金を提供することで、他国情勢へ介入することもできます。

 

2つ目に、assassinating leaders

テロ組織のleaderを暗殺するのが良いか悪いか、これはなぜか最近の高校生大会でよく出ているトピックですね。

ここで問題となるのは、leaderを除去した後テロ組織がどう変わるか、です。

暗殺を肯定するなら、leaderがいなくなればテロ組織が弱体化/穏健化すると言いたいし、暗殺を反対するなら、leaderを殺すとかえってテロ組織が強大化/過激化すると言いたいですよね。

ここで使える話を記しておきます。

 

テロ組織が弱体化/穏健化すると言いたい場合:

テロ組織というのは常にCIAやMI6等の諜報機関からの脅威にさらされています。密告者やスパイが潜んでいるかもしれないですよね。それに対処するために、必然的に中央集権的構造になります。つまり、トップの数人だけが重要な情報を持っている状態です。だからこそ、leadersを殺せば、今後の活動に大打撃を与えられるわけです。

 

テロ組織が強大化/過激化すると言いたい場合:

テロ組織というのはleaderがcult of personalityを持つ(個人崇拝されている)ことが多いです。それが宗教的なものなのか、カリスマなのかは組織ごとに違うでしょう。では、そんな崇拝されているleaderが殺されたらどうなるか。当然怒りますよね。今まで以上に過激化してしまう。

 

これはあくまで一例ですが、テロ組織の構造がどうなっているかを考えると良いと思います。

 

3. International Politics

次は国際政治について見ていきます。

 

よく、「国際政治は無政府状態(anarchy)だ」と言う人がいます。

国内では政府(警察)が法律を遵守しない人を罰し、秩序を守っているが、国際政治には各国よりも強い権力が存在しない、ということです。

個人的には、これは非現実的な見方だと思います。

国際法(International law)を見てみましょう。警察が存在しないから誰も遵守しないか、というとそうではないですよね。

一応、なぜ拘束力のない国際法が機能しているかの理由を説明すると、

1) 国際法は国内政治に影響します。大多数の人は国際法がuniversal, neutral, basic, goodなものと捉えているからです。

例えば、アメリカはベトナム戦争が長期化した際、国内ではベトナムでの枯葉作戦(米軍がベトナムに毒薬ダイオキシンが含まれた大量の除草剤を散布)が国際法違反ではないかと大きく批判され、撤退論が高まりました。

また、例えば中国が南シナ海でフィリピンやインドネシアの領海侵犯をしたとして、「国際法違反だ!」と言われた際、「国際法なんでくそくらえ!」とは言いませんよね。「領海侵犯してません」と反論するはずです。

2) 国際法に遵守することはsoft powerに繋がります。

日本やオランダ、ドイツ等は国際法を基本遵守することで、国際社会での影響力を高めてますよね。

3) 国際法秩序から抜け出すことは現実的に難しいです。

例えば、南アフリカガンビアICC(国際刑事裁判所)の脱退を表明したことがあります。(これはICCがアフリカの政治リーダーばかりを狙って起訴しており、西洋中心・帝国主義的要素を色濃く持っていると批判されているからです。)しかしながら、南アフリカの場合は最高裁ICC脱退を憲法違反とし脱退は中止、ガンビアでは政権交代により脱退は中止されました。このように、国際法秩序から脱退する政治的コストはかなり大きいです。

長々と書きましたが、要は何が言いたいかというと、前述の経済制裁や軍事介入等は例外中の例外です。基本的に各国の対立は外交チャンネルでの解決をすることができます。Diplomatic sanction (例えば、政府高官の訪問の制限や取り消し、外交団やスタッフの追放や撤退)はかなりの場合有効です。

ディベートでは例外の話ばかりするので、原則を忘れがちです。必ず上記を念頭にディベートしましょう。

 

以下、今後のリサーチの指針を示しておきます。

まず、真っ先に調べるべきは、米中関係です。

国内政治・国内経済・貿易・外交について調べておくべきでしょう。

よくある対立軸として、アメリカvs中国 どちらと友好関係を保つべきか、があります。アメリカの方が中国より良い、中国の方がアメリカより良い、両方言えるようにしましょう。

中国については、国内政治ではCCP(中国共産党)/習近平のincentiveやregional governmentsの構造、香港・マカオ、台湾、新疆ウイグル自治区について、国内経済では不動産始めとする経済危機や中国経済の鈍化、深圳はじめとするテクノロジーセクターについて、貿易では米中貿易対立もそうですが、インドとの貿易も見ておくと良いです。外交は何よりも領土問題です。南シナ海尖閣諸島以外にも沢山領土問題を抱えています。全部見ておきましょう。

 

ここから先は国際大会で頑張りたい人向けです。自分用メモも兼ねてます。

次に、EUについて。EUではハンガリーポーランド専制化の問題、ドイツやフランスでのEuroscepticism、難民の受け入れについて、ロシアとの関係、とりわけエネルギー不足について、を調べておけば良いと思います。また、細かいEUの構造は調べる必要性が薄いですが、EUでの意思決定について、どの政策がUnanimity(全会一致)なのかQualified majority(多数決)なのかは調べておくべきです。時間があれば、東ヨーロッパについても調べると良いでしょう。EUの加盟国をさらに東に拡大するか、というディベートもあるので、現在加盟していないがこれから加盟するかもしれない国も見ておくと良いです。

他の地域についても軽く触れておきます(僕自身のリサーチto doリストみたいな感じです)。

 

中東 - サウジアラビアとイランの代理戦争、イスラエル(パレスチナ問題、ネタニヤフ首相について、不安定な議会制度)、イラン(Mahsa Amini protests、Funded rebel groups)、サウジアラビア(MBS、国内経済のdiversification、Sportswashing、OPEC)、レバノン(国内政治体制)、カタール(World Cup)、トルコ(NATOでの行動、Erdogan and recent election、Secular military、クルド人ハイパーインフレ)、イラク(イラク戦争後の情勢)、シリア(アサド政権)、エジプト(イスラエルとの関係、エチオピアとのナイル川問題)

東南アジア - マレーシア(Ethnic conflicts、1MDB Scandal)、タイ(軍隊)、フィリピン(マルコス独裁、ドゥテルテ前政権、2022 Presidential Election、ミンダナオ)、ミャンマー(ロヒンギャ問題、軍クーデタ)、インドネシア(首都移転、対中国軍事費強化)、シンガポール(経済成長)

南アジア - インド(カシミール紛争、BJP、中国との関係、Hijras)、パキスタン(軍隊、Imran Khan、BRI、タリバンとの関係)、スリランカ(BRI)、アフガニスタン(タリバン、米アフガニスタン侵攻)

ラテンアメリカ - War on drugs、アメリカによる介入の歴史、IMF bail out、ベネズエラ(Chávez→Maduro vs Guaidó、ハイパーインフレ)、メキシコ(シナロアカルテル)、ブラジル(Bolsonaro and Lula)、コロンビア(大麻栽培)、アルゼンチン(経済史)、ボリビア(モラレス元政権、リチウム開発)

アフリカ - ルワンダ(大虐殺、Post-conflict reconstruction、Paul Kagame、Female representation)、エチオピア(Tigray conflicts、Abiy Ahmed、ナイル川ダム建設)、ナイジェリア(南北の宗教対立、Lagos overpopulation)、南アフリカ(ANC、Jacob Zuma and Cyril Ramaphosa)、ガーナ(エンクルマ)、アンゴラ(ダイアモンド)、コンゴ民主共和国(Minerals)

東ヨーロッパ - オスマン帝国支配→ソビエト支配の歴史、ロシア(ウクライナジョージア)、旧ユーゴスラビア領(民族対立、International Criminal Tribunal、Srebrenica)、ハンガリー(Viktor Orbán)、ポーランド(PiS)、ベラルーシ(ルカシェンコ)、ギリシャ(トルコとの領土問題)、Nagorno-Karabakh

その他 - イギリス(Brexit)、フランス(アフリカ政策の転換、政教分離)、イタリア(政治的混乱)、ポルトガル(薬物合法化)

ここに書いてあることを詳しく調べておけば、大抵の場合対応できるはず…!

 

4. 意味不明なモーションへの対処

IRモーションで時々かなりニッチな国や組織がテーマになることがあります。そんな時、どう対処すればいいのでしょうか?

以下のモーションを例に考えてみます。

The Muslim Brotherhood is a militant Muslim organization known for its connections with various terrorist groups. Its public agenda is the liberation of all oppressed Muslim groups internationally and the perpetration of Muslim theocracies. The group's leadership has recently expressed concern and interest in the genocide of the Uyghur population in the Xinjiang region.

The CCP has continuously perpetrated various crimes against the Muslim population in the region, such as systematic violence, internment camps, and forced sterilization. This has led to a rapid drop in the Uyghur population, and despite international pressure against the genocide the CCP has silently continued its 're-education programs'.

TH, as the Muslim Brotherhood, would initiate guerilla operations against the CCP in support of the Uyghurs in the Xinjiang region. (Gemini Cup 2023 QF)

 

Muslim Brotherhoodって何?ウイグルとこの組織にどう関係あるの?意味分からないんだけど となっている人が大半だと思います。

こういう時はディベートの基礎に立ち返ります。

普段のモーションで考えることを考えるだけです。

今回の場合、以下で詳しく書きますが、これらの事を考えればどんなケースを立てるべきか見えてきます。

①アクターモーション→アクターのinterestを考える

②Comparative (GovとOppの世界の比較)を考える

③モーションで不明瞭な単語を見たら必ずCharacterisationをする

まずはアクターモーションだから、Muslim brotherhoodのinterestについて考えてみます。

Info slideに書いてありますね。

the liberation of all oppressed Muslim groups internationally and the perpetration of Muslim theocracies

↑これがinterestです。

次に考えるのはcomparativeです。Govの世界では何が起きて、Oppの世界では何が起きるか。

Govではウイグルの人を守るべく中国にゲリラ攻撃するとして、Oppでは何をしますか?おそらくOppでも黙ってる訳ではないですよね。外交的に圧力をかけるとか、ウイグルの人達に資金援助などの支援をするとか、色々な代替案があるはずです。

では、モーションのguerrilla operationとは、そもそも何なのでしょうか?

ゲリラ攻撃とは、進撃してくる敵軍に対し、小規模な待ち伏せを頻繁に行う戦術です。森林に隠れて敵を待ち伏せて攻撃して、劣勢になったらすぐ退却して、退却した所からまた待ち伏せ攻撃をして、というのを繰り返す感じ。

ゲリラ攻撃は軍事力に劣る側がより強力な相手と戦う際によく使われます。ベトナム戦争とかイラクとかアフガニスタンで圧倒的な軍事力のアメリカ軍に対してタリバンとか現地勢力が使った戦法です。

もちろんOppとしては、ゲリラ以外の戦法で戦うべきだ!と主張することもできますが、軍事力で圧倒的に優勢な中国に軍事的に対抗するにはゲリラ戦法が一番なので、戦わないで前述のように外交的交渉やウイグルの人への援助を主張すると考えられます。細かいけど、こういうところまで気を配れると上達しますよ!

なので、ここまででわかったのは、Govは中国に対して軍事行動という過激な戦略、Oppはもっと穏やかな代替手段を採るということです。

この対立軸に見覚えがありませんか?前回のSocial Movementsの記事に書いた、Confrontational vs Conformist strategyってやつですね。過激 vs 穏便。

見覚えのある対立軸まで落とし込めたら、あとはいつも通りのことをするだけ。

Govだったら過激な戦略が成功する! Oppなら過激な戦略は反発(backlash)を引き起こす! 

これをこのモーションに落とし込みます。

Govなら、ゲリラ攻撃によって中国が新疆ウイグル自治区での人権侵害を止める、Oppならゲリラ攻撃によって中国がMuslim Brotherhoodに対して反撃をして組織を崩壊させる、ですよね。

ここまでくると分かると思います。このモーション、GovとOppのメインの争点はゲリラ攻撃に対して中国がどのような反応をするか、です。Muslim Brotherhoodとか関係ないです。中国のincentiveを分析して、どういう反応するかを考えましょう。

ここから先の分析は考えてみてね!

 

このような感じで、意味わからないモーションが出てきたとしても、いつも通りに考えることでケースは思いつきます。

 

長くなってしまいましたが、今回の記事はここで終わりたいと思います。

IRは調べれば調べるほど強くなりますが、知識がなくても何とかなる分野でもあります。パニックにならず、冷静にプレパしましょう!

最後に復習用音源です。

 

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